国連「ビジネスと人権に関する指導原則」の成立とその展開について

こんにちは!法学部のやまだかなです。
 最近本当に暑いですが、みなさんお元気でしょうか?

 以前私が書いたブログでは、人権についてお話しさせてもらいました。
そこで、今日はビジネスによって侵害されている人権を保護するという視点から、2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」について紹介したいと思います!!(本当は経営学にも興味があって経営学的視点から持続可能な開発について考えたいのですが、私は法学部に所属し、経営学の知識も乏しいため、法学部生の視点から書きたいと思います。今夏からアメリカで経営学を少しかじってきますので、勉強したら、経営学的視点から考えていきたいと思います!)

 人権問題をはじめ、企業活動の社会や環境に及ぼす負の影響に対し、国際社会での対応が求められる背景として、グローバリゼーションによる「ガバナンスギャップ(=グローバルな市場の広がりと、その結果生じる諸問題を解決する社会の能力の間の格差)」があります。そのため、人権の実効的な保障のためには国際社会が直接企業に働きかけ、ガバナンスギャップを狭め、埋めることが必要になります。
 
 この国連指導原則の一般原則は3つあります。①人権を保護する国家の義務、②人権を尊重する企業の義務、③救済へのアクセスの3つです。
 では、この3つについて詳しく説明していきます。
人権を保護する国家の義務
 これまでは、受入国(=企業の進出先の国)による保護義務が中心でしたが、企業を送り出す側の本国の保護義務、つまり、自国企業が国外進出先で人権侵害を引き起こすことがないよう措置をとる保護義務も含まれています。

人権を尊重する企業の責任
 これには、人権を尊重する責任(=人権を侵害しない責任)が含まれており、企業に対し、尊重の範囲を超えて人権状況を「支援」したり、「促進」したりする等の積極的な貢献までを責任として求めるものではありません(もちろん、積極的な企業の役割を否定するものでもありませんが)。人権の侵害とならないことを確保する責任にとどまります。
 また、企業の人権尊重責任は、国家の能力とは別であり、国内法があるかないかにかかわらず、企業は世界のどこで活動していても最低限、国際的に認められた人権基準を尊重する必要があります。
 加えて、自社やグループ企業のサプライチェーンだけでなく、他社である取引先などの事業パートナーとのバリューチェーンでの取引関係での侵害まで対象になります。
 そして、人権尊重をリスクマネジメントとの対象とする場合、「人権(誰の何の権利)にどのくらい負の影響を与えているのか」という観点に立った、「自社」ではなく「人」を起点としたリスク評価になっていなければいけません。「経営リスク」の回避のために取り組むのではなく、「人(人権)へのリスク」を減らすことが第一です。

救済へのアクセス
 これは、企業活動により人権を侵害された被害者を救済するために、国家、企業、その他ステークホルダーが設けるべき様々な仕組みについて取り上げています。受入国に加えて、企業の本国も立法、行政、司法、を通じた救済措置をとることが求められています。

 以上のことより、この国連指導原則には2つの意義が指摘できます。1つ目は、初めて「国連」という名がつき、かつ国家代表により承認された企業ガイダンスであることです。2つ目は、深刻な対立を生み出した人権規範とは異なり、国連加盟政府に加えて、企業、NGO、労働組合、投資家などの幅広い支持を得たことです。その結果、国連指導原則は、政策枠組として国連の諸活動に反映され、様々なCSR指針に導入されたり、OECD、EU及び加盟国の政策に組み入れられることになりました。


 以上、2011年に国連で承認された「ビジネスと人権に関する指導原則」について説明しました。このような、国家だけでなく、企業にも責任を国際的に求める動きはとても素晴らしいことです。法学部生としても、とても喜ばしいことだなと感じます。しかし、経営学的に考えるとなかなか利益追求との両立は難しいのかな、とも思います。ですので、経営と法学の両面から、持続可能な開発について考えていきたいなと思いました。

最後まで読んでくださって、ありがとうございました。

byやまだかな

<参考文献>
新興国ビジネスと人権リスク -国連原則と事例から考える企業の社会的責任(CSR)-
著者:海野みづえ 発行所:現代人文社 発行年:2014年


この記事へのコメント

  • たから

    文字の色分けとか、段落分けとか、読者に配慮してて読みやすいです!!
    国連がトップダウンで幅広く人権を訴えるのは心強いことですね!
    一方で、一企業、一企業、細かいところまで管理しきれないという現実もありますね。
    やはり、やまださんも”利益追求との両立”について指摘されている通り、
    トップダウンと同時に、ボトムアップからのインセンティブや働きかけも重要でしょう。そうでないと、全てのビシネス環境で人権の尊重が本当に行動にうつされるのは難しそうですね。

    企業内における人権や多様性の尊重について面白い記事があったので共有させてもらいます(英語)。
    CEOが娘を持つ企業は、統計的にCSR(特に多様性や男女平等に関するもの)に積極的になりやすいらしいです!
     https://agenda.weforum.org/2015/07/why-are-ceos-with-daughters-nicer-to-work-for/?utm_content=buffer517ad&utm_medium=social&utm_source=facebook.com&utm_campaign=buffer
    2015年08月10日 08:01
  • 優馬

    アメリカでの学習頑張ってくだいさいね。
    今回のブログを見させてもらい、個人的な意見ではありますが、
    やはり企業で人権を尊重するというものは企業ごとの基準も曖昧ですし、そのようなことを言ってられない企業もあるのが現状であると思います。実際に働いてみて感じたこととしては、明白な法律(労働基準法など)があっても実際には上手くその基準を見かけだけ守っているように見せかけているようなこともあります。(いきすぎたサービス残業や残業時間のごまかしなど。)またそれは会社レベルではなく、支店や各事業所レベルで誤摩化されることであるので表に見えにくく法としても取り締まりにくいものである場合もあります。
    働く側も自ら人権を自覚ならびに主張でき、それを企業が必ず受け止められるシステムが必要になると思います。
    2015年08月27日 16:38
  • たから

    優馬さん ”企業で人権を尊重するというものは企業ごとの基準も曖昧ですし”その通りですよね!!見せかけでどうとでもなりますしね 笑 ISOなんかでは(強制力はないと思いますが)、一般基準としてそこらへんの曖昧さの問題をなんとかできないものですかね。

    ISOについてはやろうやろうと思いながら勉強不足なのですが 笑 だれかブログで取り上げてくれないかな
    2015年08月28日 02:57
  • sally

    さりは逆に法の知識がないから、すごく面白かった!経営も法も実は密接に絡み合ってて、どんなにいいビジネスのアイデアがあっても、必ずまず法律ありきなわけで、、、どっちも両立して学べたらいいね。
    2015年09月01日 00:46
  • やまだかな

    たからさん
    コメントありがとうございます。
    そうですよね。ボトムアップからの働きかけの方が大事に思えます。いくら法律や基準が整っていたとしても、それを遵守する側がきちんとしていないと意味がないですよね。

    記事の共有ありがとうございました。面白かったです。特に、sonでは同じ結果が出なかったというところが面白かったです。daughter持ちのCEOが増えるといいですよね!
    2015年09月02日 04:40
  • やまだかな

    優馬さん
    コメントありがとうございます。
    そして、アメリカ留学頑張ります。ありがとうございます。

    私もそれすごく思います。いくらきちんとルールがあっても遵守されなけらばなんの意味も成しません。やはり、企業側が働きかけることが最も大事だと思います。その点でも、法学から一度離れて経営学を少しだけですけど勉強しようと思いました。
    経営学の知識を身につけたら、経営学的視点から考えてみたいと思います!!



    2015年09月02日 04:47
  • やまだかな

    sallyさん
    コメントありがとうございました。

    そうですよね!!経営だけではだめですし、法だけでもだめですよね。
    経営の勉強したいので、また教えてください!笑
    法学少しだけなら教えれますので教えます!笑
    2015年09月02日 04:49
  • みやもと

     国連が行うこのような取組は日本ではあまりとりあげられない印象があるので、このように広めていくことはとても大切だと思います。わかりやすい記事ありがとうございました。
     私も以前、この指導原則などについて調べたことがあるので、一つお聞きしたいことがあります。2011年に承認されたこの指導原則を踏まえて、やまださんはこれから、そして企業と国際社会はどのようにビジネスと人権の問題を解決していくべきだと考えますか?抽象的でもいいので、聞かせてください。
     というのも、この指導原則はあくまでソフト・ロー(法的拘束力なし)なので、実施はあくまで企業や国家の自助努力に任されますよね。私はこの指導原則を踏まえて、将来的にもう一歩踏み込んだ、法的拘束力あるもの、つまりは条約形式のものを、国連は作っていくべきだと考えています。もちろんそこに多くの障害はあります。企業は国際法の主体になれるのかという問題、拘束力あるものを、企業や国家は決して喜ばしく思わない、という問題…etc。それらも踏まえた上で、ご意見を聞かせてもらえれば幸いです。
    2015年09月02日 23:48