BoPビジネスとは?


”貧困ビジネスは儲けてなんぼ!!”経営学部のたからです。
今回はBoPビジネスという概念の紹介をさせていただきたいと思います。

The bottom line is simple: It is possible to “do well by doing good." (Prahalad, 2006)

(BoPビジネスのキモは単純だ。”いいことをしてお金を儲ける”ことはできる。:著者意訳)

これはBoPビジネスの提唱者であるミシガンビジネススクールのC・K プラハラード教授(以下 プラハラード)の言葉です。彼はFourtune at the Bottom of the Pyramidというベストセラー本を2006年に出版し、BoPビジネスの概念を世に広めました。その書籍の導入章の一番最後に"さあ、これからBoPビジネスについて学んで行こう!"と読者に向けてプラハラードが記したメッセージがこの一文です。
(プラハラードかっけー )

今回のブログは、主にこの本を元にプラハラードが提唱するBoPビジネスの内容を説明させていただきたいと思っていますので、

”いいことをしてお金を儲ける”ことはできる。

これを念頭に、今回以降、僕のBoPについての記事にお付き合い願えればと思います。

BOPとは?

BOPビジネスの紹介に入るには、まず、BOPという用語を説明します。

BoP とはBottom of Pyramid (ピラミッドの底辺)の略語です。
(ただし、Bottomという響きが差別的だということで、最近ではBase of Pyramidと呼ばれることが好まれます)
この”ピラミッド"とは、下のような、全世界人口の所得と人口の分布を表した図を指します。
(貧困ラインが年収$3000ドルとなっており、プラハラードの2002年時の定義と少し違いますが、要点は同じです。)

img_pyramid.jpg
(出典:http://www.valuefrontier.co.jp/bop/)

上にいくほど人数が少なく、下にいくほど多い、三角形の”ピラミッド”形になっています。
高所得者層のToP(Top of Pyramid)は少なく、
中所得者層のMoP(Middle of Pyramid)はすこし人数が増え、
低所得者層のBoP(Bottom of Pyramid)は世界人口の大多数を締めます。

BoPビジネス提唱者プラハラードの定義では、
BoPとは、このピラミッドは全世界70億人(図は66億人)が形成するピラミッドの底辺にいる、1日2ドル以下で生活している低所得層を指します。(Prahalad, 2006)
プラハラードとハート(2002)によると、驚くべきことに、このBoPの概念が提唱された2002年時点で、BoP人口は世界の3分の2にあたる40億人にも昇っていました。そして彼らは、その市場規模は13兆ドルにもなると結論付けました(図は5兆ドル)。
プラハラードは経営学者として、この1日2ドル以下で生活している40億人、そして13兆円のBoP市場に注目したのです。

1990代後半から、プラハラードはこのBoPに焦点を当てるビジネスモデルを、BOPビジネスとして提唱し始めました。
そして、公には2002年の2つの共同論文と、2006年に書籍Fourtune at the Bottom of the Pyramidを発表しました。国際経営のフィールドでも世界的に著名な経営学者であるプラハラードの主張は、世界中の経営学者や経営者の思想に影響を与えるに至りました。(Prahalad, 2006) これがBoPやBoPビジネスという用語の誕生、ひいてはBoPビジネスの議論の幕開けです。

提唱者プラハラードが考えるBOPビジネスとは?

それでは本題のBoPビジネスの紹介に入りたいと思います。

BoPビジネスとは、簡単に言えば、BoPの貧困層を、消費者や生産者という主体者として、経済活動の巻き込む(ことに特別に配慮して作られた)ビジネスモデルの総称であると言えるでしょう。
そのBoPビジネスがなぜ重要なのか?その意義を、背景を紹介しながら説明したいと思います。

(*今回のブログでは、簡単な説明のため、消費者としてBoPにのみフォーカスを当て、話を進めます。生産者についてや、今回触れていない詳細は後日機会があるごとに紹介しますが、気になる場合はコメント欄等で質問してください。)

まず、前提として、プラハラードは国際経営学のフィールドの学者なので、グローバル経済や国際的な貧困問題というグローバルな文脈でBoPビジネスを考えていただきたいです。また、これも前提として、グローバル、ローカル問わず、経済活動の主体であるビジネスセクターはお金儲けを目的として活動します。

彼らは合理的に考えて、ターゲット顧客を高、中所得者層のToP、MoP、と設定した成熟市場に参入しがちです。貧乏人よりもお金持ちの方が会社の商品やサービスに多くのお金を払ってくれますし、先進国の方がインフラも整っていてビジネスがしやすいですし、リスクも少ないからです。特に、力のある多国籍企業などはToP、MoPマーケットでどんどんビジネスを展開しようとします。

ゆえに、ToP、MoPマーケットでは、様々な企業がひしめき合い、市場競争が起こります。企業にとってはいわゆるレッドーシャンですが、お金が集まる市場にはそれだけのうまみもありますから、企業はその市場の中で切磋琢磨します。そのおかげで”神の見えざる手”によって市場が最適化されていき、消費者はより安い対価でよりよい商品やサービスを購入することができます。前提として、先進国のToP、MoP層の消費者はこうして、資本主義経済の恩恵を受けています。

一方、BoPの貧困層をターゲット顧客とする市場は企業にとっては参入するには障壁が多く、その割に魅力が少ないとされていました。結果として、BoP向けのビジネスを行おうとする企業や、実際に行う企業は、全世界的に割合として少なくなります。さらにその結果として、当然、市場競争も起こりにくいので、BoP市場では”神の見えざる手”が働きにくいと言えます。つまり、BoP層の消費者は、貧困ゆえに資本主義の効率化システムから取り残され、非効率な経済環境下での生活を強いらてていると言えるのです(*1)。このような環境下におかれたBoP層の消費者の”ニーズ”や”ウォンツ”は、従来の商品やサービスではうまく満たされていません。

こういうBoP市場における現状がBoPビジネスの議論の出発点で、提唱者プラハラードの問題提起です。
プラハラードはこの現状を、ビジネス開発という二つの視点から捉えました。

すなわち、
ビジネスの視点からは、40億人と大規模でありながら軽視され、”ニーズ”や”ウォンツ”を満たせていない未開拓な潜在市場、さらにはユニークで革新的なイノベーションを生み出す(*2)、”機会”として、
開発の視点からは、貧困であるがゆえに貧困ペナルティなどの経済の非効率を被らざるを得ず、それがまた貧困を促進して貧困問題を悪循環させている、という、解決すべき”問題”として、です。

そして、プラハラードがこの機会問題を踏まえ、解決策として考え出したのが、BoP層をグローバルもしくはローカルな経済システムに積極的に取り込むこと(プラハラードはどちらかというとグローバル寄り)。

ビジネスという面からは、あくまで利益を上げるための合理的な打ち手として優れている。
同時に、開発という面でも経済発展を促すことができる。
まさに

”いいことをしてお金を儲ける”

そんな一石二鳥案がBoPビジネスです。(と僕は理解しています 笑)

プラハラードはBoPビジネスの考え方を引っさげて、
”営利企業さん達!お金儲けがしたいなら、これまで誰も見向きもしなかったBoP市場に参入するべきですよ!”と言いだしたのです。
最初のうちは、大御所プラハラードといえど、「何を血迷ったことを言ってるんだ」と中々相手にされなかったようですが、現在は日本を含めて世界中の営利企業の中でBoPビジネスへの感心が高まっているのはご存知の通りかと思います。
(プラハラードかっけー)
また、開発分野の学者や国際機関の多くも、経済開発による世界的貧困問題撲滅の効果的な手段としてBoPビジネスの効果性を認めています。中でも、IFC(国際金融公社)はBoPビジネスの可能性をいち早く見抜き、2005年からこれまでに400以上の優秀なBoPビジネスモデルに投資を行い、その総額はなんと110億ドルにも昇ります。(IFC, n.d., http://www.ifc.org/wps/wcm/connect/Multilingual_Ext_Content/IFC_External_Corporate_Site/IFC_Home_Japan/Topics/BOP+business/)
(プラハラードかっけー)

結論、プラハラードかっけー。

*1この部分を詳しく説明した”貧困ペナルティ"についてはにしむのブログ記事のコメント欄に少し書いてありますが、後日取り上げますね!
*2リバースイノベーションなどで議論されるトピックです。プラハラードはイノベーションもBoPビジネスの重要な点として捉えていますが、経営学の少しマニアックな話になるので後日改めて紹介します。

インクルーシブビジネスとは?

最後に、よくBoPビジネスとごっちゃにされるインクルーシブビジネスという概念について。
結論からいえば、BoPビジネス=インクルーシブビジネス、同じものだと考えてもらってよさそうです。

インクルーシブビジネスとは国際金融公社 (International Finance Corporation 以下 IFC)が作った用語だそうです。IFCのWebサイトによると、インクルーシブはBoPビジネスの別名で、ピラミッドの底辺という少々差別的な表現を避けるために使用を促進している用語なのだそうです。

ちなみに、
インクルーシブとは、"包括的な”という意味ですが、これはプラハラードの、”BoP層を包括的に経済活動にとり込む”というポイントを考慮した用語だと思われます。

以下、IFCによるインクルーシブビジネスの定義です
インクルーシブビジネスは商品、サービス、生計の機会へのアクセスを、経済的に無理なく、拡張的に(包括的に)広げるビジネスモデルです。 :著者意訳
“expand[s] access to goods, services, and livelihood opportunities for those [in BoPs] in commercially viable, scalable ways" (International Finance Corporation [IFC], n.d., para. 2).

BoPビジネスって用語の方が現段階では知名度が高いので、今回まではBoPビジネスで通してましたが、僕も今後のブログはインクルーシブビジネスという呼び名を使っていきたいと思います。

読んでくださってありがとうございました。
コメント等、よろしくお願いします。

ちょっと話が抽象的すぎるので、
次回の記事では具体例なんか書きますね(笑)
また、プラハラードやインクルーシブビジネスへの批判なんかも追って紹介します。


以下、参考になりそうなサイト。

国際経営学者の北海学園大学大学院の 菅原 秀幸教授は BOPビジネスの出発点 というブログ記事の中でビジネス・サイド、開発サイドの同床異夢だと説明されているのも興味深いですね。
図もわかりやすいので以下に拝借させていただきます。

20101121144000.gif

BOPビジネス研究
http://sugawaraonline.com/bop/

BOP ビジネス関連文献 - これらをおさえるとBOPビジネスが分かる
http://sugawaraonline.com/bop/bop-bunken/

参考資料

International Finance Corporation (n.d.). Inclusive Business Models. Retrieved February 11, 2015, from http://www.simul-conf.com/iblf2012/inclusive.html

Prahalad, C. K., & Hammond, A. (2002a). Serving the World's Poor, Profitably. Harvard Business Review, 80(9), 48-57.

Prahalad, C. K., & Hart, S. L. (2002b). The fortune at the bottom of the pyramid. Strategy+Business, 20, 1-13.

Prahalad, C. (2012). Bottom of the pyramid as a source of breakthrough innovations. Journal of Product Innovation Management, 29(1), 6-12.

Prahalad, C. K. (2006). The fortune at the bottom of the pyramid: eradicating poverty with profits. Philadelphia: Wharton Business Publishing.

菅原 秀幸, (2010, November 21) BOPビジネスの出発点 retrieved 2015 August 30th from http://d.hatena.ne.jp/Seattle/20101121/1290318177


この記事へのコメント

  • k

    とにかく興味そそられまくりの記事でした。ただ、たからさんも自覚されていましたが、なにか具体例がほしいです!笑 次の記事も期待しています!!!
    2015年08月31日 10:20
  • S

    開発とビジネスの同時進行なんて、魅力的すぎる。具体例待ってます!タイでならBOPビジネスを考えられる機会も多いし、知れてよかった!(プラハードかっけー)
    2015年09月01日 00:01
  • S

    開発とビジネスの同時進行なんて、魅力的すぎる。具体例待ってます!タイでならBOPビジネスを考えられる機会も多いし、知れてよかった!(プラハードかっけー)
    2015年09月01日 00:01
  • はっとり

    僕も同じになってしまいますが、具体的なモデルを知りたいですね(笑)実際にどう儲けるのか勉強しなきゃいけないなと思わされました。自分は開発経済学専門に勉強したいと思ってますし、、、知識不足です。とにかく勉強します。
    2015年09月01日 00:40
  • ゆうま

    数でもうける!!この数が桁違いに大きいので夢のあるもうけになりそうですね。そして良いことをしてもうけることができればそれにこしたことはないですね。
    儲けと大義両面で夢のある市場ですよね。
    2015年09月01日 14:48
  • 出口

    BoPビジネスのの定義から背景を、複数の参考文献から簡潔にまとめていて、非常にわかりやすいです。
    どういった企業が、BoPにおけるどういったマーケットで競争しているのか、それによってどういった成果・影響があるのか、もっと具体的な事例が知りたいです!
    2015年09月02日 03:19
  • たから

    Kさん、Sさん、はっとりさん、出口さん

    ごめんなさいみなさん
    やっぱり具体例ですよね!笑
    話がわかりにくいですよね!
    了解です。次回に!
    2015年09月02日 12:25
  • たから

    ゆうまさん

    ”いいことをして儲ける。”本当に理想ですよね!
    しかも、ビジネスサイドから見たインクルーシブビジネスのうまみは、数や規模だけじゃないんです!笑
    もう一つのうまみ、イノベーションについても追って紹介させてしますね。

    小山ゼミで開発サイドの視点から見たインクルーシブビジネスを勉強された際には、シェアしてもらえると嬉しいです!
    同じく小山ゼミのGAUがインクルーシブビジネス取り上げてくれないかなー 笑
    2015年09月02日 12:32
  • 文字

    Bopビジネスのようなものが
    貧困国を貧困から抜け出す
    一つの手段という側面も
    ありますよね!また文で述べて
    いたように企業としても儲かる
    ことが前提。
    ただ一つ気になったのが
    10年後100年後にこのビジネス
    モデルがどうなっているか。
    問題があるとしたらどこなのか。
    個人的な感想でもいいので
    少し聞きたいです!
    2015年09月02日 22:46
  • たから

    文字さん
    10年、100年後はどうなるのか、とっっってもいい質問をありがとうございます!!

    端的に答えれば、
    長期的にはインクルーシブビジネス自体は陳腐化すると予測されていますが、ビジネスセクターはそもそも長期に渡ってBOPビジネスを続ける気はないので、彼らはそれを問題視せず、むしろ歓迎しています。
    っという回答になると思います。

    以下、長ったらしい詳細です(笑)
    まず、質問の意図は、
    インクルーシブビジネスによって貧困層のBOPの人々を経済発展を支援すると、結果として人々の生活レベルが徐々に上がる。
    そうすると10年100年後はBOPではなく中所得者層MOP(や高所得者TOP)が世界人口の割合として多くなり、BOPマーケット規模自体が縮小することが予想される。
    そういった意味で、”長期的にはインクルーシブビジネスモデル自体が陳腐化するのではにないか?”ということでよかったでしょうか?

    僕個人の意見としましては、上記の通りのことは起こると思いますし、プラハラード然り、そのようなことは一般に予測されています。
    所得の人口ピラミッドは、菱形化していくでしょう。

    (JETROが紹介しているの図参照)
    http://www.jetro.go.jp/theme/bop/basic.html

    それに伴い、インクルーシブビジネスは陳腐化し、重要度は下がるでしょう。
    営利企業にとってBOPマーケットに参入する魅力が下がるのは、開発サイドから見れば問題点といえば問題点ですね。

    ただし、ビジネスサイドから説明すると、これは問題視されていません。インクルーシブビジネスはそもそも、10年、100年というかなり長期的な戦略で、当然貧困層が富んでいくのは折り込み済みです。というか、むしろそこが利益最大化のミソです(笑)

    というのも、先進国出身の大企業はほとんど、途上国でもインクルーシブビジネスを長期的な成長戦略の布石として行っているからです。
    例えば、経済成長が確実視されるASEANなんかでは、「今の内にBOP顧客を囲い込んでおいて、企業の知名度を上げたり現地化のノウハウを取得しておいて、ASEANの国々が経済成長した後のマーケットシェアを確立しておこう」みたいなことを考えて、大企業がBOP市場に参入したりします。
    そのような企業は、「ASEANの生活水準が上がるにつれて徐々に本業のMOP、TOP向けサービスや商品の販売にシフトしていって、成熟して拡大したASEAN市場でしっかり10年後以降儲ければいいや」みたいなことを元々考えています。
    端的に言うと、企業はそもそも現在の13兆円規模のBOP市場より、10年後に100兆円以上に成長する新興国市場をターゲットにしてると思います。

    だから、長期的に見ても
    ビジネスセクターは継続的に利益を上げることができるからオッケー。
    開発としてもBOP層の割合が下がるんだからもちろんオッケー。(ただし、残った少数のBOP層への支援は、ビジネスセクターではなく政府がNGOがやってね。)

    長くなりましたが、僕が描くインクルーシブビジネスの10年、100年後のイメージはこんな感じです。
    2015年09月03日 06:19
  • あいり

    インクルーシブビジネスについて詳しく知れてよかったです!それを実際に行動にうつした企業の例と、その結果その社会がどのように変化したかの例があれば、次回教えてもらいたいです\(^o^)/
    2015年09月03日 13:34